2016年3月20日日曜日

雅塾通信 第92号・・・山降りて 目にはやさしき青葉かな(H27.6.1)

中国の書の歴史・・・その28
 顔真卿(がんしんけい)=初唐から中唐にかけて、書法を遵守し、それにさばられたやや窮屈な書も時代を経るにしたがって徐々に変化をし、革新的気風が生まれてきました。それを大いに助長したのが顔真卿です。しかし彼が伝統を基盤とする正当な書法を無視したかと言えば決してそうではありません。書法伝授の系譜(古今伝授筆法)によれば、鐘繇-衛夫人-王羲之-王献之-智永-虞世南-欧陽詢-張旭-李陽冰(りようひょう)‐徐浩-顔真卿・・・と系統は続いています。
 初唐の人々が貴族的な調和と均整を求めて、人間のよそいきの一面だけを出していたのとは対照的に、顔真卿という人は、当然濁りも併せ持っている人間のありのままの部分を表出しても動じない人物だったようです。
 見栄も功利もなく、あるがままの自己をさらけ出すという真の人間性の躍動の書を創造したと言えるでしょう。伝統的な書則や書法の上に、積極的な自己解放への道をひらいたことは、中国書道のコペルニクス的大転換と言えるかもしれません。(中教出版・書の基本資料参照)

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