今夏、台湾(台北)の故宮博物院の名品230点あまりが東京国立博物館で出品展示されます。
書は東博では31点あります。
その中で個人的に特に見てみたいものは、孫過庭の「書譜」、趙孟頫(ちょうもうふ)の「赤壁賦」「閑居賦」、蘇軾「黄州寒食詩巻」、王羲之「遠宦帖(えんかんじょう)=手紙文」などです。
ご存知と思いますが、故宮博物院は二つあります。一つは北京市天安門広場の北側に建つ紫禁城、もう一つは台北市郊外にある故宮博物院です。ちょっと歴史を紐解いてみます。
紫禁城は15世紀のはじめに明の永楽帝が造営し、辛亥革命で清が滅びるまで、約490年にわたる二代王朝の居城でした。
1924年11月、中国最後の皇帝・溥儀が紫禁城を去った翌年、名称を故宮博物院と改めています。
中国の歴代皇帝は、文物を収集することに熱心でした。
それは単に興味があったという以上にそれら歴史が生み出した文物を所有することで、自らが中華文明の正当な継承者であることを実感し証明したかったのでしょう。多くの民族が入れ替わり立ち代わり皇帝の座に就いた中国の歴史の中にあってはそれは権力の象徴として必要不可欠のものだったと思います。
当時はおよそ200万点にのぼる文物が収蔵されていたといわれています。
しかし、紫禁城の宝物は、清王朝に取って代わった国民党とあらたに興った毛沢東ひきいる中国共産党との戦いによって流転を余儀なくされました。
第二次世界大戦後に熾烈化した国共内線のさなか、それらの宝物は重慶、昆明、南京などの都市を転々とし、ついに戦いの結果として蒋介石率いる国民党の手で台湾へ運ばれました。
不幸な歴史によって、皇帝のコレクションは二つの都市に離れ離れになってしまったのです。
現在、北京の故宮博物院には約百万点、台北の故宮博物院には約七十万点の文物が収蔵されています。
呼吸は、二か所にわかれて存在することになりましたが、ほかの博物館には観られない独自性があります。故宮博物院が所蔵している文物はすべて自分たちの祖先が作り出し、伝えてきたいわば家宝のようなものです。文明八勝以来、子々孫々が守り通してきた自前の文化の結晶です。他国の文物を多く抱え目玉にしている有名博物館が多い中でこれは世界に類を見ない博物館として位置を保っています。
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