2016年4月16日土曜日

雅塾通信 第94号・・・爽やかな 風がつぎつぎと頬を過ぎ(H27.10.1)

 9月1日、知人の個展を二つ見てきました。
一つは篆刻家の計良袖石先生です。5年に一回、6~7回目の個展と思います。東京駅地下街のギャラリー八重洲で開かれていました。
 刻字と篆刻が中心で「書はありません」と先生は仰っていましたが作品の脇にある自筆の解説文と刻字や篆刻作品を見ていれば書作品があるのと同じこと、とお見受けしました。
 先生の魅力は理論と実践の統一感です。そこに自分の立ち位置を置いて微動だにしません。
「王羲之書法の普遍性はその筆法にあります」と分析しております。

 もう一つは来年25周年記念、馬景泉(まけいせん)先生の個展です。
虎ノ門にある”東京中国文化センター”で開催されていました。かれも篆刻家です。
 馬先生はバブル期であった1990年に中国残留孤児の家族の一員として来日し、上野の美術館の前、いわゆる露店で印刀一本で生活を支え、そこをスタートして10数年で江戸川区に家を買った程の努力家、芸術家、実力者であります。
 「石刻は一生我と共にある」という一節を刻し、芸術に終わりなしとの言葉を自分に課し、胸の内には「中国の篆刻芸術」を通じて「日中友好の使者」としての役割を果たしたいと語っていました。
 最近では藤岡瓦の土を使った印、瓦当、碑(せん=粘土を焼き固めて作った建築材料、この場合文字を刻み込んだ装飾風のものをいう、大小有)を盛んに創作しています。この材料を使って壁、床などの随所にはめこんだ建物を作ったならば独特な雰囲気の建物になるだろうと想像が膨らみます。広い会場でしたがそれらの作品も多数陳列されていました。
 篆刻の実演も見せてくれましたが、運刀を見、呼吸を感じているうちになるほどと気の付くものがあり、実際に帰宅してからすぐにまねをして彫ってみました。これはうれしい収穫でした。
 1日で二つの個展、忙しくはありましたが、独自の世界を持っているお二人の姿を拝見して心満たされた気分で帰ってきました。

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