藤岡市書道協会の研修旅行に参加しました。13年前当塾で訪れた大門碑林も見学しました。日曜日にも関わらず見学者は私たちだけという静けさでした。園内には雑草が目につき、碑も表面に貼られたアクリル板との境に埃が入り碑面も白くくすんで文字が確認できないところもありました。私としては4度目の訪問でしたが寂れた感じが残念でした。
楽しみにしていたのが硯の「雨端硯本舗雨宮弥兵衛」工場見学です。
雨畑硯は今から327年前1690年(元禄三年=五代将軍徳川綱吉)に雨宮孫右衛門が作成したのが始まりとされており、現代は第十三代雨宮弥太郎が当主として引き継いでいました。当主はまだ56歳、芸大、院を卒業しており職人でありながら骨太の学者と言う風貌でした。
実際に作硯の工程を説明しながら胸に当てた大きな独特の鑿で石を彫って見せてくれました。墨色と硯の関係や硯石の特徴などが微妙な表現で解説をしてくれ見学者の素朴な質問にも丁寧に答えてくれて好感が持てました。作業をしながら次々と興味の湧きそうな話をしてくれましたが時間が少なく話を途中で切ってしまったのが悔やまれました。
雨畑硯・雨端硯いずれも「はまはたけん」として呼ばれていますが雨畑は地名からとった名称、雨端は「雨宮弥兵衛家」で作成された硯を呼ぶそうです。色調は三種ほどで「蒼黒」「淡青」「紫色」とあります。硯については通信の17号から29号までに小文で載せましたが、日本の硯については紹介してありませんでしたので産地をいくつか挙げておきます。主に11か所あるそうです。四つ紹介します。
★赤間石=山口県厚狭郡の赤間関の産、石は粘板岩とも擬灰岩ともいわれている。色調は
三種ほど、赤紫、青緑、それの混合、これも江戸時代以前より発掘されていたらしい
。紫金石とも呼ばれている。
★若田石=長崎県下県郡の若田川より産出したもの、石は千枚粘板岩であり色調は淡青黒
色、かの紫式部が源氏物語を書写するのに用いたといわれているが定かではない。
江戸初期以前より産出していた記録があり日本の硯石としては最良と言われている。
★玄昌石=宮城県桃生郡雄勝町の海岸より産出した。石は粘板岩で、色調は青黒を呈し
ている。やはり江戸時代から採石されていて産出量も豊富なため硯以外にも用途がある
。東日本大震災により甚大な被害を被っている。
★竜渓石=長野県上伊那郡の天竜川上流付近より産出。石は粘板岩で天然不定形のゴロ
ゴロしたものが多い。色調は青黒でなかには銀砂を含んでいる。名称も伊那石・横田石
などと六つほどある。発見されたのは江戸末期であるが世に出されたのは昭和の初めこ
ろで天然形を活かしたものが多い。
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