2019年5月12日日曜日

雅書道塾通信 第135号・・・軒下に つばめ止まって思案顔(H31.5.1)


元年51

時代は令和に変わりました。「どんな時代になって欲しいですか?」宮城へ集まった人たちへのテレビのインタビューです。老若男女ほとんどの人が「平和な時代に・・・」の声が圧倒的でした。赤ちゃんを抱いた若い夫婦も「この子が大きくなっても平和な時代でいて欲しい」と切実です。これは裏を返せば今、誰もが平和に対する漠然とした不安を抱いているからでしょう。

さて、“晴れた五月の青空にー♪”という歌がありますが今の時期、夜明けが早くていつもより早起きをしてしまいます。暫く休んでいたラジオ体操を始めるなど体を動かしたくなる朝の清々しさです。
我が家の狭い庭にもスイートピー、チューリップ、サクラソウ、ボケ、パンジー、木蓮などが色鮮やかに咲き誇っています。年中行事である苦瓜の植え付けも終わりました。
間もなく山も里も新緑に包まれるでしょう。四季の移り変わり、特に暖かさに向かっていくときは本当にありがたく思います。

昇格試験も終わりました。受験された皆さんお疲れ様でした。普段の練習プラス試験課題ですからいやが上にも沢山書くことになります。それが技量の向上に繋がりますから今後も資格のついた方は遠慮や臆することなく挑戦して下さい。
前月号でテレビ発表の文字「令和」は方筆系、「平成」は円筆系の字と書きましたが少し詳しく説明しますと、前者は背勢とも言う文字の造型法で、楷書を書いたとき二本の縦画が背き合う書き方で、引き締まった厳しい感じが出ます。欧陽詢(おうようじゅん)九成宮醴(きゅうせいきゅうれい)(せん)(めい)が代表的な作品です。
後者の円筆系は向勢とも言い縦画が外にふくらんで向き合うように書くこと、円みがありゆったりとした暖かさのある書き方で(てい)(どう)(しょう)鄭羲(ていぎ)下碑(かひ)などが代表的な書風です。
楷書作品を見たらこれはどっち系かなと分析してみるのも書を見る目を高めていくことに繋がります。

昨年の6月、通信125号で紹介した絵画コレクター、秋山 功氏の「続々・私の本もの美術館展」が今年も“ららん藤岡”で開催されました。
昨年初めて拝見して面白かったので今回も出かけました。会場正面入口の所に書家の天田研石先生揮毫の「令和」の色紙が飾ってありました。
秋山さんの好きな書家は井上有一(19161985)だそうです。前衛書家ですが晩年に書かれた作品“噫、横川国民学校”は当時深川の横川尋常小学校で教師をしていたとき遭遇した東京大空襲の惨状をことばで表した作品です。戦後33年経ってやっと書き上げることのできたという鎮魂の作品です。
数年前、長野県東御市にある梅野記念絵画館で開催された井上有一展で実際に拝見してきましたが詩と文字に圧倒され立ちすくんだことを覚えています。
ところで、絵を描く人には「さま」になる文字を書く人が多い。知人の画伯の言葉によれば「字を書くという意識よりデッサンをしている感覚で書いている」と言いました。かみしめたい言葉です。

2019年5月6日月曜日

雅書道塾通信 第134号・・・踏ん張って校歌斉唱卒業生(H31.4.1)


平成時代も一ヶ月を切りました。
仕事によっては慌ただしく影響を受けているところもあるでしょうがほとんどは淡々とした日常で過ぎていくのではないでしょうか。
興味は、新元号がなんとつけられるか、そして最初にテレビに写し出される文字はどんな文字か、にありました。
41日、「令和」と発表され、音感がちょっと軽いかなと感じましたが「和」という字は意味からしても音からしても大好きな文字でしたので「よしっ!」と思いました。「令」は命令のことばが浮かんで「あれっ?」と思い「漢字海」を引いてみました。
勿論命令の意味もありましたが他に①立派な。美しい。よいと言う意味があり、例としては、令聞令望=よい評判や立派な人望。また②として、他人の親族につける敬称(例)「令室」「令嬢」などがありました。
さて、揮毫された文字ですが平成の時と雰囲気が変わっていました。緊密な構成と強い線は南北朝時代、北魏の造像記の流れを汲んだ文字です。
31年前の「平成」の文字も同じく南北朝時代、北魏の書の系統でしたがこちらは時代が少し後で鋭角的な技巧を取り除いた懐の広い遠心的な文字構成でした。
「令和」は方筆系、「平成」は円筆系と別けてよいでしょう。特に「令和」に見られる線の細太の変化、波法の重厚さ、線質の強さ、配字などに作品としても学ぶべきところがあります。
何れにしましても来月から12月まで「令和元年=2019年」です。

少し前になりますが2月に「群馬書道大賞」を受賞した藤岡書道協会のT先生の記念展を鑑賞してきました。
墨象作品です。文字を題材として自分の感情を表現する芸術と理解しています。前衛書とも呼ばれていた記憶があります。前衛と言えば芸術分野では誰も取り組んでいない先駆的な役割を果たしていくことで簡単な事ではありません。
見る人の好みもあるでしょうが、作者が全知全能を駆使して作り上げた作品はやはり見応えがあります。
会員の皆さんも機会を作ってそれらの作品を鑑賞して前衛書が生まれてきた経過、書の役割、鑑賞の仕方など学んでみるのも書を理解する上で参考になること大であると思います。

本年度前期の昇格試験期間中です。受験する方は一生懸命取り組んでいることと思います。陽気も大分穏やかになってきました。教室での締め切りは今月最後の練習日、27日(土)です。よろしくお願いします。

来年6月には第三回の墨盒書道展を開催いたします。6月と言っても作品集を作ったりで作品締め切りは2月の末ころになります。
なにを書くか早めに決めて、よりよい作品を仕上げましょう。