元年5月1日
時代は令和に変わりました。「どんな時代になって欲しいですか?」宮城へ集まった人たちへのテレビのインタビューです。老若男女ほとんどの人が「平和な時代に・・・」の声が圧倒的でした。赤ちゃんを抱いた若い夫婦も「この子が大きくなっても平和な時代でいて欲しい」と切実です。これは裏を返せば今、誰もが平和に対する漠然とした不安を抱いているからでしょう。
さて、“晴れた五月の青空にー♪”という歌がありますが今の時期、夜明けが早くていつもより早起きをしてしまいます。暫く休んでいたラジオ体操を始めるなど体を動かしたくなる朝の清々しさです。
我が家の狭い庭にもスイートピー、チューリップ、サクラソウ、ボケ、パンジー、木蓮などが色鮮やかに咲き誇っています。年中行事である苦瓜の植え付けも終わりました。
間もなく山も里も新緑に包まれるでしょう。四季の移り変わり、特に暖かさに向かっていくときは本当にありがたく思います。
昇格試験も終わりました。受験された皆さんお疲れ様でした。普段の練習プラス試験課題ですからいやが上にも沢山書くことになります。それが技量の向上に繋がりますから今後も資格のついた方は遠慮や臆することなく挑戦して下さい。
前月号でテレビ発表の文字「令和」は方筆系、「平成」は円筆系の字と書きましたが少し詳しく説明しますと、前者は背勢とも言う文字の造型法で、楷書を書いたとき二本の縦画が背き合う書き方で、引き締まった厳しい感じが出ます。欧陽詢の九成宮醴泉銘が代表的な作品です。
後者の円筆系は向勢とも言い縦画が外にふくらんで向き合うように書くこと、円みがありゆったりとした暖かさのある書き方で鄭道昭の鄭羲下碑などが代表的な書風です。
楷書作品を見たらこれはどっち系かなと分析してみるのも書を見る目を高めていくことに繋がります。
昨年の6月、通信125号で紹介した絵画コレクター、秋山 功氏の「続々・私の本もの美術館展」が今年も“ららん藤岡”で開催されました。
昨年初めて拝見して面白かったので今回も出かけました。会場正面入口の所に書家の天田研石先生揮毫の「令和」の色紙が飾ってありました。
秋山さんの好きな書家は井上有一(1916~1985)だそうです。前衛書家ですが晩年に書かれた作品“噫、横川国民学校”は当時深川の横川尋常小学校で教師をしていたとき遭遇した東京大空襲の惨状をことばで表した作品です。戦後33年経ってやっと書き上げることのできたという鎮魂の作品です。
数年前、長野県東御市にある梅野記念絵画館で開催された井上有一展で実際に拝見してきましたが詩と文字に圧倒され立ちすくんだことを覚えています。
ところで、絵を描く人には「さま」になる文字を書く人が多い。知人の画伯の言葉によれば「字を書くという意識よりデッサンをしている感覚で書いている」と言いました。かみしめたい言葉です。